lactobacillus
投稿日:2023年7月13日/更新日:2024年3月22日
乳酸菌生産物質は乳酸菌の発酵により作られる代謝物質、および菌体成分の総称です。
腸内フローラを介さず直接生体に作用する、いわゆる「バイオジェニックス」と呼ばれる概念に基づく成分で、近年注目を集めています。
健康効果としては、腸内環境の改善、免疫改善・アレルギー緩和、口腔症状の改善など、様々な効果を有しており、サプリメントの需要も高まっているのが現状です。
本記事では、乳酸菌生産物質の代表的な健康効果や摂取方法、副作用について詳しく解説します。乳酸菌生産物質について知りたい方、摂取を考えている方には有益な内容となっていますので、是非参考にしてみてください。
乳酸菌生産物質とは、乳酸菌の発酵により作られる代謝物質、および菌体成分の総称です。
乳酸菌は善玉菌の1種で、腸内で糖などを発酵し、乳酸や生理活性ペプチドなどの代謝物質を作る役割を果たしています。
代謝物質を作った後は死滅しますが、そのまま菌体成分として残ることが多く、この代謝物質と菌体成分を総称して「乳酸菌生産物質」と呼んでいます。
乳酸菌はそのまま摂取しても生きた状態ではほとんど腸に到達せず、代謝物質はあまり産生されません。
そのため、一般的には乳酸菌生産物質は乳酸菌を培養タンクで共棲培養・発酵させ、上清(代謝物質)と沈殿物質(菌体成分)を生成し、抽出・濃縮して作られています。
死菌乳酸菌(菌体成分)とは、乳酸菌の死骸のことで、菌体を構成する成分の全てを指します。
乳酸菌は発酵後に死滅して死骸となりますが、そのまま菌体成分として残るケースが一般的です。
菌体成分は菌の体を構成する細胞壁や、細胞核にある核酸などから成っており、おもな成分については以下の通りとなっています。
・細胞壁:ペプチドグリカン、ムラミルジペプチド
・核酸:デオキシリボ核酸、リボ核酸、核酸誘導体
菌体成分は腸のパイエル板と呼ばれる組織を刺激することで免疫賦活の効果があることが分かっています。乳酸菌の種類によっては、生菌よりも死菌の方が強い免疫刺激作用を示すケースも少なくありません。
そのため、最近では乳酸菌生産物質の中でも、菌体成分の注目度が高まっています。
バイオジェニックスとは、腸内フローラを介さず、直接、体に作用する食品成分のことです。
比較的新しい成分の概念で、プロバイオティクス、プレバイオティクスと並ぶ健康食品成分の指標となっています。
バイオジェニックスは基本的に生菌ではないため、胃酸や胆汁などで壊れてしまう心配がありません。
また、腸内フローラとして腸内に存在する細菌群との拮抗が起こらないため、効果の減弱が起こる可能性も低くなっています。
乳酸菌生産物質はバイオジェニックスに基づいた成分なので、直接、体に作用して種々の健康効果を示します。
なお、バイオジェニックスにも腸内細菌のバランスを正常に整える働きがあり、必ずしも腸内フローラを介さないわけではないので、その点については注意が必要です。
プロバイオティクス、プレバイオティクス、バイオジェニックスの違いについては、以下の表のとおりです。
名称 | 特徴 | 具体的な食品 |
---|---|---|
プロバイオティクス | 生菌として腸内フローラを介し、腸内細菌のバランスを改善して生理作用を示す。(摂取した生菌が定着・発育することはほとんどない) | ヨーグルトや乳酸菌飲料、味噌、納豆など |
プレバイオティクス | 腸内有用菌の増殖を促進させ、腸内細菌のバランスを整えて生理作用を示す。 | 食物繊維やオリゴ糖を含む食品(サトウキビや玉ねぎ、蜂蜜など) |
バイオジェニックス | 腸内フローラを介さず、直接体に働きかけて生理作用を示す。腸内フローラに働きかけ、腸内細菌のバランスを整える場合もある。 | 乳酸菌生産物質 |
先ほど説明した通り、乳酸菌生産物質は体外(培養タンク)で科学的に生成・抽出することが多いため、サプリメントでの摂取が一般的です。
サプリメントの場合には、成分が濃縮して配合されているので、乳酸菌生産物質を効率的に摂取でき、健康効果を実感しやすくなっています。
ちなみに、乳酸菌を摂取しても同等の効果は得られますが、そのためには一般的なヨーグルト(100億個の乳酸菌を含むもの)を1日100個摂取する必要があります。
1日100個のヨーグルトを摂取するとなると、身体的にも経済的にも負担が大きいため、とても現実的ではありません。
そのため、乳酸菌生産物質を摂取する場合には、サプリメントを服用するのがおすすめです。
乳酸菌生産物質の健康効果はおもに以下の通りとなっています。
・腸内環境の改善
・免疫改善、アレルギー緩和
・口腔症状の改善
・発がん抑制効果
・脂質代謝改善作用
乳酸菌生産物質は、上記のような様々な健康効果が確認されているため、健康食品などの分野を中心に大きく注目を集めています。最近では知名度も高くなりつつあり、摂取需要も高まっているのが現状です。
ここでは、乳酸菌生産物質の健康効果について詳しく解説していきます。
乳酸菌生産物質の代表的な効果が、腸内環境の改善効果です。
乳酸菌生産物質は、ヒト試験において、腸内細菌「Oscillospiraceae」と「Sutterellaceae」を有意に減少させたことが確認されています。
Oscillospiraceaeは糞便の臭い物質「吉草酸」を産生し、Sutterellaceaeは胃腸感染症に関与する潜在的有害菌なので、これらを減少させることは腸内環境を健康に保つうえで有益です。
また、同試験において、酢酸を産生する潜在的有益菌「Desulfovibrionaceae」を有意に増加させたことも確認されています。
腸内で酢酸が産生されると腸内環境が酸性に保たれ、殺菌効果が維持されるので、健康な腸内環境の維持に役立つのはもちろん、感染症の予防効果にも期待されています。
【参考】https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/36/4/36_199/_pdf
乳酸菌生産物質の2つ目の効果が、免疫改善・アレルギー緩和効果です。
乳酸菌生産物質のうち、菌体成分は腸のパイエル板を刺激し、免疫細胞からのIgA抗体産生を誘導することが分かっています。
産生されたIgA抗体は腸粘膜に分泌され、免疫バリアとして機能するので、乳酸菌生産物質の摂取は免疫機能を改善・向上させるうえで効果的です。
また、免疫が過剰活性している場合には、同様の機構で免疫細胞のバランスを整え、アレルギー症状を抑制することも確認されています。
最近では花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患が増えているので、これらの疾患に対する有用性も研究されています。
【参考】https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience/46/2/46_129/_pdf
乳酸菌生産物質には口腔症状の改善効果も確認されています。
口腔症状の代表的なものとしては、齲蝕(虫歯)や歯周病などがありますが、これらの症状には口腔内の細菌が関与するケースも少なくありません。
実際、細菌が歯の周りに集まると、歯垢(プラーク)を形成し、酸を作り出した場合には虫歯に、炎症性の毒素を作り出した場合には、歯周病になるといわれています。
しかし、乳酸菌生産物質には虫歯、および歯周病原因菌の増殖を抑える作用が報告されており、これらの口腔症状を改善・予防できる可能性が示唆されています。
また、乳酸菌生産物質には腸内環境を改善し、免疫力を高める作用があるので、歯周病の場合には生体防御機構を介した予防効果も期待できるでしょう。
【参考】https://ciala.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/04/6.pdf
乳酸菌生産物質は発がん抑制効果があることでも有名です。
ヒト試験での報告によると、乳酸菌生産物質を摂取したグループでは腸内細菌叢が変化し、ビフィズス菌として知られるbifidobacteriumが有意に増加したことが確認されています。
bifidobacteriumの増加は、大腸での発がんリスクを低下させることが知られており、乳酸菌生産物質の摂取によって大腸がんを予防できる可能性が示唆されています。
実際、マウスを用いた試験では、乳酸菌生産物質の摂取によって、大腸での発がんが抑制されたことが確認されており、現在でも研究が進められている状態です。
ちなみに、乳酸菌生産物質は乳がんの発がんリスクを低下させることも知られており、他のがんに対する効果の研究も進められています。
【参考】https://ciala.co.jp/wordpress/wp-content/uploads/2019/04/10.pdf
乳酸菌生産物質には、脂質代謝改善作用があるのも1つの特徴です。
乳酸菌生産物質は脂肪細胞における脂肪滴の蓄積量を減少させ、脂肪細胞の肥大化を抑制することが分かっています。
また、脂質合成に関与する遺伝子発現を抑制することも報告されており、脂肪蓄積を減少させる可能性も示唆されています。
これらの作用は脂質代謝の改善に大きく寄与するので、脂質代謝のパラメーターを正常に保つうえで大変有益です。
実際、ヒトを対象とした臨床試験においても、乳酸菌生産物質が総コレステロールやLDLコレステロール、中性脂肪などの数値を顕著に改善させたことが確認されています。
【参考】https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/23/2/23_65/_pdf/-char/ja
現在のところ、乳酸菌生産物質に副作用は確認されていません。
乳酸菌生産物質は食品由来の成分なので、重篤な副作用などは起こらないとされています。
ただし、大豆成分が含まれているため、アレルギーがある場合には摂取を控える必要があります。
また、摂取量によっては腸が緩み、一時的に便が緩くなる可能性もあるので、そのような場合には量を減らすか、一時的に服用を止めて様子を見るようにしましょう。
乳酸菌生産物質はバイオジェニックスの概念に基づく成分で、腸内フローラを介さず直接生体に作用する特徴を有しています。
健康効果については腸内環境の改善、免疫改善・アレルギー緩和、口腔症状の改善など、様々な効果が確認されており、サプリメントの需要も高まっているのが現状です。
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《記事監修:千葉 大成 管理栄養士・博士(生物環境調節学)》
管理栄養士、博士(生物環境調節学)、専門は栄養生理学 千葉 大成
東京農業大学大学院博士課程修了後、国立健康栄養研究所、大学研究機関で、食と健康に関わる研究活動および教育活動に18年携わってきました。研究活動としては、機能性食品素材に着目した骨粗鬆症予防に関する研究を主に行ってきました。一方で、教育活動の傍ら、地域貢献セミナーや社会人教育にも携わってきました。
そういった研究・教育活動から疾病をいかに予防するかを考えるようになりました。つまり、薬剤で“病気にフタ”をすることで病気を抑えることよりも生活習慣(食事、運動、サプリメント)で“病因を流す”ことによって疾病を予防していくことを積極的に働きかけていきたいと考えるようになりました。
2000年東京農業大学農学研究科博士後期課程修了後、2018年まで大学教育研究機関で主にフラボノイドによる骨代謝調節に関する研究に従事した。