L-carnitine
投稿日:2022年11月11日/更新日:2024年3月22日
L-カルニチンはダイエット効果や疲労回復効果があることで有名な成分です。
最近では生活習慣病や心臓病の予防、不妊体質の改善、記憶力の向上などの効果も見込まれており、幅広い領域で注目を集めている成分でもあります。
L-カルニチンは主に肉類に多く含まれており、食事からも摂取できますが、サプリメントで摂取することで簡単に補給することが可能です。
今回は、このL-カルニチンについて解説をしていきます。
摂り方が分からない方や安全性が心配な方に向けて、摂取方法や摂取量、副作用などについても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
L-カルニチンとは、アセチルL-カルニチンやプロピオニルL-カルニチンなどを含めた「カルニチン」に包括される成分の1つです。
アミノ酸の1種であり、体内では同じアミノ酸であるリジンとメチオニンから腎臓や肝臓で合成され、骨格筋や心筋などに多く分布しています。
体内での働きとしては、脂肪酸を細胞のミトコンドリアに運搬する役割を担っています。
脂肪酸はミトコンドリア内で燃焼され、それに伴いエネルギーを作り出すので、細胞のエネルギー産生の観点からもは重要な成分です。
また、ミトコンドリア内で生成した有害物質を外へ運び出す役割も果たしており、ミトコンドリアを保護するためには欠かせない成分となっています。
冒頭でも説明した通り、L-カルニチンには多くの有益な効果があることが知られています。
様々な領域で注目され、研究も進められているのが現状です。
ここでは、このL-カルニチンの効果について解説をしていきます。
参考:L-カルニチンの継続摂取および単回摂取がヒトのエネルギー代謝に及ぼす影響
L-カルニチンは脂肪酸をミトコンドリアへ運搬する働きがあるので、摂取すると脂肪を効率的に燃焼しやすくなり、ダイエット効果が期待できます。
有酸素運動などをする際にも、L-カルニチンを摂取した方が効率的に脂肪が燃焼しやすくなるため、ダイエット効果が期待できます。
逆に、L-カルニチンが不足した状態では、有酸素運動をしても効率的な脂肪燃焼効果はあまり期待できなくなります。
運動によるダイエット効果を高めるためにも、L-カルニチンは重要な成分です。
脂肪酸は燃焼されるとエネルギーに変換されるので、L-カルニチンを摂取すると細胞内でエネルギーが産生されやすくなります。
産生されたエネルギーは細胞内のタンパク質合成や酵素活性の維持などに使われるので、細胞の活性化による疲労回復にも寄与します。
実際、L-カルニチンの摂取によって肉体的・精神的疲労の感じやすさが減少したというデータも出ており、L-カルニチンの摂取による疲労回復は体感しやすい効果として上げることができます。
L-カルニチンを摂取すると脂肪が燃焼しやすくなるので、内臓への脂肪の蓄積を防ぐ効果も期待できます。
中性脂肪や悪玉コレステロールなどの量も抑えやすくなり、肥満を防止しやすくなるので、生活習慣病の予防にも効果的です。
また、最近ではL-カルニチンに血圧低下や炎症抑制、心不全症状の改善作用などがあることも分かってきており、心臓病の予防にも役立つ可能性が示唆されています。
ミトコンドリアの機能が活発だと精子や卵子の質が向上しやすくなるので、妊娠率も高まってきます。
そのため、L-カルニチンの摂取でミトコンドリアを活性化させると、男女の不妊体質の改善も期待可能です。
ミトコンドリアの機能は加齢に伴って低下する傾向があるので、精子と卵子の質も加齢とともに低下すると思われます。
不妊体質になっている場合には、L-カルニチンを摂取することで改善が見込める可能性もあるかもしれません。
L-カルニチンは脳機能にも関与しており、脳内のシナプスにおいてアセチルコリンの合成と放出を促進させる働きがあることが分かっています。
アセチルコリンは記憶力や認知機能などに関与しており、脳機能を正常に維持するためには欠かせない神経伝達物質の1つです。
L-カルニチンを摂取すると脳内でアセチルコリンの量が増え、シナプス間隙への放出量も増えやすくなるので、記憶力の向上やアルツハイマー病の予防にも効果が期待できます。
L-カルニチンの摂取方法には、食事からの摂取とサプリからの摂取がありますが、サプリメントから摂取するのがおすすめです。
サプリから摂取すると1日の推奨摂取量を簡単に摂ることができるので、摂取する際の負担が小さく、継続して摂取しやすくなります。
一方、食事から摂取する場合にはL-カルニチンを多く含む食べ物から摂取する必要がありますが、そのような食べ物はそこまで種類が多いわけではないので、継続的な摂取は難しいのが現状です。
L-カルニチンは肉類の食べ物に多く含まれています。
中でも羊肉での含有量が特に多く、次いで牛肉での含有量が多くなっています。豚肉や馬肉、鶏肉など、他の肉類にも比較的豊富です。
肉の状態としては、色が赤いものほど含有量が多いと言われています。
また、あさりやかき、さんまなどの魚介類に加え、牛乳などにも含まれており、動物性の食べ物にはL-カルニチンが含まれていることも珍しくありません。
アボカドなどの一部の野菜類、マッシュルームなどにも含まれています。
一例として、牛肉のL-カルニチン含有量は以下の通りです。
L-カルニチンの摂取量は、1日あたり200mg〜500mgが推奨されています。
牛肉では1kgあたり約700mgのL-カルニチンが含まれているので、1日あたり約300g〜700gの量を食べればL-カルニチンを摂取できる計算です。
ただ、日本人は和食中心の食生活なので、この量の牛肉を継続的に摂取するのは難しいのが現状と言えます。
体内への脂肪の蓄積や消化器系への負担を考えると、この量の継続的摂取はあまり好ましいこととは言えません。
そのため、L-カルニチンを無理なく摂取するためには、サプリメントから摂取するのがおすすめです。
カルニチンの食事摂取基準はありませんが、厚生労働省は、過度のカルニチン摂取を防ぐことを目的に、外国の摂取目安量
(スイス:1000mg/日、アメリカ:20mg/kg/日)を参考にして、1日の摂取上限の目安量を約 1000mg/日としています 2)。
L-カルニチンは基本的には安全な成分ですが、過剰摂取した場合には副作用を引き起こすこともあります。
サプリメントで1日あたり3,000mgのL-カルニチンを摂取した場合、吐き気、嘔吐、腹部痙攣、下痢、体臭などの症状が生じたという報告が実際になされています。1),3)
そのほか、尿毒症患者においては筋力の低下、発作性疾患を有する患者においては発作の発生が稀な副作用として報告されており、一部の疾患患者の過剰摂取には注意が必要です。
そのため、サプリメントからL-カルニチンを摂取する場合には、適正量を守り上限を超えない範囲で摂取することが大切になってきます。
食事などを通して他の栄養素もしっかりと摂りながら、バランス良く摂取していくようにしましょう。
●参考文献
1) Rebouche CJ. Carnitine. In: Modern Nutrition in Health and Disease, 9th Edition (edited by Shils ME, Olson JA, Shike M, Ross, AC). Lippincott Williams and Wilkins, New York, 1999, pp. 505-12.
*カルニチンには2つの光学異性体が存在しています。そのうち、ヒトの体内にはL体のみが存在しており、有害なD体は存在していません。L-カルニチンのみが体内で活性があり、食物に含まれています。
2) 厚生労働省医薬局食品保健部基準課長 食基発第1225001号 平成14年12月15日
3) The editors. Carnitine: lessons from one hundred years of research. Ann NY Acad Sci 2004;1033:ix-xi.
L-カルニチンはダイエット効果や疲労回復効果などがあり、幅広い方に向けて訴求しやすい成分となっています。
生活習慣病や心臓病の予防、不妊体質の改善、記憶力の向上などにも役立つ見込みがあり、特定の方に対しても訴求しやすい成分です。
食事からの摂取は負担がかかることから、昨今ではサプリからの摂取も増えています。
Held(ヘルト)では、最新のニーズやお客様のご要望に合わせて、様々な機能性原料を用いた商品の提案をしています。
商品化するにあたっては、企画から製造、販売まで、幅広くサポートが可能です。
L-カルニチン配合製品の対応も可能ですので、L-カルニチンを配合した独自製品の販売を検討している場合には、お気軽にお問い合わせください。
管理栄養士、博士(生物環境調節学)、専門は栄養生理学 千葉 大成
東京農業大学大学院博士課程修了後、国立健康栄養研究所、大学研究機関で、食と健康に関わる研究活動および教育活動に18年携わってきました。研究活動としては、機能性食品素材に着目した骨粗鬆症予防に関する研究を主に行ってきました。一方で、教育活動の傍ら、地域貢献セミナーや社会人教育にも携わってきました。
そういった研究・教育活動から疾病をいかに予防するかを考えるようになりました。つまり、薬剤で“病気にフタ”をすることで病気を抑えることよりも生活習慣(食事、運動、サプリメント)で“病因を流す”ことによって疾病を予防していくことを積極的に働きかけていきたいと考えるようになりました。
2000年東京農業大学農学研究科博士後期課程修了後、2018年まで大学教育研究機関で主にフラボノイドによる骨代謝調節に関する研究に従事した。