コラム

Column

投稿日:2026年2月19日/更新日:2026年2月12日


成長期にスポーツをする子どもたちの体づくりとプロテインの考え方  ―食事を主体とし、必要に応じて補助する ―
スイミング

はじめに

近年、スポーツをする小中高生の間でも「プロテイン」という言葉が身近になり、保護者の方から「成長期に飲ませても大丈夫なのか」「プロテインは必要なのか」といった相談を受けることが増えています。
一方で、成長期の栄養は単に筋肉を増やすことが目的ではありません。
骨や内臓、血液、神経系など、体全体が同時に発達する大切な時期です。

 
本稿では、日本人の食事摂取基準を踏まえながら、成長期における適切な食事の考え方と、プロテインの位置づけについて整理します。

 

成長期の体は「つくること」が最優先

8〜16歳頃は、第二次性徴を含め、身体構造が大きく変化する時期です。筋肉だけでなく、骨量の増加、血液量の増大、ホルモン分泌の変化などが同時に進みます。
日本人の食事摂取基準では、この年代のたんぱく質必要量は成長と日常活動を支えるための量として設定されており、筋肥大のみを目的とした過剰摂取を前提とした数値ではありません。
そのため、「スポーツをしている=たんぱく質をたくさん摂ればよい」という単純な考え方は、成長期には当てはまりません。

 

まず整えるべきは毎日の食事

成長期の栄養管理において最も重要なのは、日常の食事内容を安定させることです。
具体的には、
•主食(ごはん・パン・麺類)
•主菜(肉・魚・卵・大豆製品)
•副菜(野菜・海藻・きのこ類)
•乳製品
といった基本的な食事構成を整えることで、たんぱく質だけでなく、エネルギー、ビタミン、ミネラルを同時に摂取できます。
たんぱく質は、エネルギー摂取が十分であってこそ、体づくりに利用される栄養素です。
エネルギーが不足している状態では、たんぱく質は体の材料として十分に使われません。

 

スポーツをすることで起こりやすい栄養のズレ

実際の現場では、次のような状況がよく見られます。
1)朝食量が少ない
2)または欠食
3)練習後、食事まで時間が空く
4)疲労により食欲が落ちる
5)間食が菓子類中心になる
このような場合、必要量を食事だけで満たすことが難しくなることがあります。ここで初めて、「食事を補う手段」としてのプロテインを検討する余地が生まれます。

 

成長期におけるプロテインの位置づけ

プロテインはあくまで補助食品(サプリメント)であり、食事の代替ではありません。成長期において活用を検討できる場面としては、
1)練習直後で食事がすぐにとれない場合
2)食が細く、たんぱく質摂取量が不足しやすい場合
3)間食の質を改善したい場合
などが挙げられます。

 

一方で、
1)プロテインだけに頼る
2)摂取量が過剰になる
3)食事内容が軽視される
といった使い方は、成長期の体づくりとして望ましいものではありません。

 

体づくりに必要なのは「たんぱく質だけ」ではない

成長期の体づくりには、たんぱく質に加えて、炭水化物、脂質、カルシウムや鉄を中心としたミネラル、各種ビタミンといった栄養素が相互に関係しながら必要とされます。
たんぱく質は体の材料となる重要な栄養素ですが、それだけを十分に摂取しても、エネルギーや微量栄養素が不足している状態では、体づくりに効率よく利用されません。
特に炭水化物は、成長期における主要なエネルギー源であり、不足すると体はたんぱく質をエネルギーとして消費してしまいます。その結果、本来筋肉や組織の形成に使われるはずのたんぱく質が、十分に活かされなくなります。
 

また、カルシウムや鉄などのミネラル、各種ビタミンは、骨の形成や血液の生成、代謝の円滑化などに関与しており、成長期の健康な発達には欠かせません。
このように、成長期の体づくりは特定の栄養素を増やすことではなく、全体のバランスを整えることが重要です。
プロテインは、あくまで食事で不足しがちな部分を補うための選択肢の一つであり、「摂れば成長が早まる特別な食品」ではありません。日々の食事を土台としたうえで、必要に応じて活用することが望ましいと考えられます。

 

まとめ

成長期の体づくりの基本は、日々の食事を安定してとることにあります。
プロテインは、食事で不足しがちな場合に限り、補助的に活用する選択肢の一つです。
食事量や練習量、体調、生活リズムは個人差が大きく、一律の方法が当てはまるものではありません。
無理に取り入れる必要はなく、成長段階や状況に応じた判断が重要です。成長期の体づくりにおいて最も大切なのは、短期間の成果を求めることではなく、日々の積み重ねを継続することです。
適切な食事、十分な休養、そして無理のない栄養サポートを続けることで、子どもたちの体は時間をかけて着実に成長していきます。
周囲の大人がそのプロセスを理解し、焦らせずに支えることが、将来にわたる健康とパフォーマンスの土台づくりにつながります。

 

成長期の食事指導において最も大切なのは、短期的な成果を求めて子どもを急がせることではありません。
体の大きさや成長スピードを他者と比べさせず、無理をさせない環境を整えることで、子ども自身が自分の体と向き合い、長期的に健やかに成長していく土台が築かれます。
指導者は、その過程を支え、見守る立場であることを常に意識することが重要です。
「何を与えるか」ではなく、「どのような考え方を伝えるか」が重要なので、正しい知識と冷静な判断を共有することが、今後の子供たちの健康と競技力の両立につながると思います。

 

■参考文献・資料
•厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版/2025年版)」
•日本スポーツ協会「成長期のスポーツ栄養ガイド」
•文部科学省「学校給食実施基準」