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投稿日:2022年3月17日/更新日:2024年3月22日


エイジング研究の新潮流「ミトコンドリア活性」
女性の横顔

近年、健康寿命やアンチエイジングの新たな対策として、「細胞再活性化」が注目を集めています。
この細胞再活性化のカギを握るのが、細胞内に存在する小器官の一つであるミトコンドリアです。ミトコンドリアを増加させることが細胞の活性化にもつながることが分かってきています。

ミトコンドリアの働きに欠かせない栄養素として、CoQ10(コエンザイムQ10)、PQQ(ピロロキノリンキノン)、5-ALA(5-アミノレブリン酸)などが挙げられており、これらを配合した商品の需要が高まっています。

 

細胞のエネルギー生産工場、ミトコンドリア

ミトコンドリアのイラスト

 

私たちの身体は60兆個(新説では37兆個)ともいわれる膨大な数の細胞から構成されています。私たちが生命活を維持し活動していくうえで、エネルギーが必要です。そして、その細胞のエネルギー産生工場として重要な役割を担うのがミトコンドリアです。ミトコンドリアは、一つひとつの細胞の中に数百から数千個単位で含まれており、食事から得た栄養素と細胞が受け取った酸素を使ってATP(アデノシン三リン酸)を産生します。

 

ATPはあらゆる生物に必要不可欠なエネルギーの供給源で、さまざまなエネルギーに変換されることから「エネルギー通貨」とも呼ばれています。そして、私たちはATPが分解されることで生まれるエネルギーを利用して、生命活動を維持しているのです。

 

ATPの約95%はミトコンドリアでつくられています。1日で生産される量は、その人の体重と相当といわれております。

また、ミトコンドリアがATPを生成する過程で「代謝水」と呼ばれる水分も生み出されています。この代謝水は身体のうるおいを保つために欠かせない要素です。

 

ミトコンドリアがATPを産生するときに、副産物として活性酸素が発生します。身体のサビの原因になる活性酸素は悪者と思われがちですが、体内で細菌やウイルスを撃退する殺菌作用を備えており、私たちにとってある程度必要なものです。

 

しかし、ミトコンドリアの機能が低下すると、細胞はエネルギー不足に陥ってしまいます。さらに、活性酸素除去システムの働きが悪くなると、活性酸素が大量に発生し、さまざまな不調につながる可能性もあります。

 

つまり、健康な身体をつくり、毎日を健やかに過ごすためには、ミトコンドリアが重要なカギを握るといっても過言ではないのです。

 

 

健康長寿のカギはミトコンドリア活性にあり

ランニングしている女性

ミトコンドリアは、免疫システムにも大きく関わっています。

 

免疫とは、体内に侵入したウイルスや細菌などを異物として認識し、身体から排除する仕組みです。病気や老化から身体を守り、元気で若々しくいるためには免疫力の低下を防がなければなりません。

 

免疫に関わる細胞には、異物をいち早く見つけて攻撃するナチュラルキラー細胞や、貪食能力の高い「掃除屋」として知られるマクロファージ、一度侵入した抗原を記憶し、2回目以降に効率よく対抗するT 細胞やB 細胞などがあります。

 

残念ながら免疫力は20代で早くもピークを迎え、それ以降は加齢とともに衰えて「免疫老化」が進んでしまいます。この免疫老化を防ぐカギとなるのがミトコンドリアです。ミトコンドリアが活性化すると免疫細胞に十分なエネルギーが供給されるため、免疫老化の予防につながります。

 

また、ミトコンドリアは免疫を正常に機能させる役割も担っています。病原体に感染して細胞が損傷したときは、異常細胞が増殖しないよう、アポトーシス(個体をより良い状態に保つために、あらかじめプログラムされた細胞の自然死)を誘導したり、免疫細胞の暴走を防いだりしています。

 

 

ミトコンドリア活性を助ける栄養素

錠剤をもっている手

ここからは、ミトコンドリア活性をサポートする三つの栄養素とその働きについてご紹介します。

 

PQQ(ピロロキノリンキノン)

1979年に酸化還元酵素の補酵素として発見された水溶性キノン化合物です。全身の細胞エネルギーを促進させる働きがあります。

 

世界で最初にビタミン(ビタミンB1)が1910年に発見されて以来、1948年に見つかったビタミンB12まで、これまで13種類のビタミン物質が認められています。PQQを含まない餌をマウスに与えると成長が悪くなり、皮膚がもろくなるなどの異常を示しました。その報告から、新たな機能性を有する重要な栄養素として注目され、新しいビタミンの候補として考えられてきました。

 

2003年には理化学研究所がPQQを14番目のビタミンとして英国の科学雑誌『Nature』誌に発表しましたが、ビタミンには分類されません。

 

PQQは納豆や豆腐、ピーマン、パセリ、緑茶などの食品や飲料のほか、母乳にも含まれており、安全性が確認されています。サプリメント先進国のアメリカでは2008年頃からすでにPQQを配合したサプリメントが販売されています。

 

コエンザイムQ10

コエンザイムとは酵素の働きを助ける「補酵素」という意味です。なかでもコエンザイムQ10は身体のエネルギー産生をサポートする補酵素で、広く様々細胞の活性化に関りがあるとされています。ユビキノンとも呼ばれ、ビタミンによく似た生理作用を持ちます。

 

また、抗酸化作用にも優れ、体内の活性酸素を除去し酸化ストレスから細胞や組織を守り、免疫力や心臓・血流の健康維持、美容などに関与する効果が期待できる成分です。

 

日本では1974年から心筋梗塞などの心疾患の治療薬として使用されてきましたが、2001年に健康補助食品へ、2004年に化粧品への配合が認められました。それ以来、コエンザイムQ10配合のサプリメントや化粧品が続々登場しています。

 

5-ALA(5-アミノレブリン酸)(5-アミノレブリン酸)

5-ALA(5-アミノレブリン酸)は、36~40億年以上前、地球に生命が誕生した時から存在していたとされ、人間を含め、植物や動物などあらゆる生き物に内在するアミノ酸です。生命の維持活動に欠かせない成分であることから「生命の根源物質」と呼ばれています。

 

5-ALAが8個連結するとプロトポルフィリンⅨという化合物になり、そこに鉄が結合することで「ヘム」をつくり出します。エネルギーを生み出すためには、このヘムの存在が必要不可欠です。ヘムは5-ALAからのみ生産され、ATPの生産や活性酸素の分解に関わっています。

 

5-ALAは、健康食品だけでなく、医療や農業、化粧品など幅広い分野でさまざまな有用性が期待されています。最近では、新型コロナウイルス感染症患者に対する5-ALAを用いた研究が進められており、今後の展開に大きな期待が寄せられています。

 

参照:長崎大学による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた特定臨床研究開始のお知らせ|長崎大学

 

 

世界の研究者が注目するPQQ

ビタミンとしては分類されなかったPQQですが、ビタミン様物質として世界中から注目を集めています。

 

PQQに期待される働きの一つとして、脳機能の活性化に関する効果が挙げられます。ヒトや動物を対象とした試験では、PQQの投与により記憶能力や識別能力の向上など脳機能の改善作用が報告されており、高齢化社会において今後ますます需要が高まると予想されます。

 

また、PQQは脂質や尿酸値の改善、肌乾燥の防止、血圧や血糖値の低減、インスリンの抵抗性(インスリンの効き具合のこと)の改善など、さまざまな可能性を秘めた物質として研究の進展が期待されています。

参照:なるほどPQQ(ピロロキノリンキノン)|三菱瓦斯化学

 

 

まとめ

細胞の働きを活発にして免疫老化を防ぐには、「細胞のエネルギー産生工場」の異名を持つミトコンドリアの活性化が重要といわれるようになり、美容や健康業界において、ミトコンドリア活性との関連が期待される成分が注目されています。

 

Held(ヘルト)では、お客様のニーズに合わせたサプリメントの企画・開発・製造のサポートを得意としております。サプリメントの開発をご検討の際はぜひお問い合わせください。

 


参考文献

ミトコンドリア|e-ヘルスネット

 

『細胞から元気に!“エネルギー工場”ミトコンドリアを活性化して「免疫老化」を防ごう』|サワイ健康推進課

 

Adduct formation of pyrroloquinoline quinone and amino acid|PubMed

 

半世紀ぶりの新種ビタミンPQQ(ピロロキノリンキノン)|独立行政法人 理化学研究所

 

ミトコンドリアとは|5-ALA研究所

 

なるほどPQQ(ピロロキノリンキノン)|三菱瓦斯化学

 

長崎大学による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者に対する5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた特定臨床研究開始のお知らせ|長崎大学