コラム

Column

投稿日:2025年1月1日/更新日:2025年1月1日


子供ロコモティブシンドローム
ファストフード

●はじめに
私たちが、歩く・動くために必要な身体の仕組みを運動器といい、エイジングによって運動器は低下します。
骨・関節・筋肉・神経などで成り立っている運動器は、これらの組織の障害によって、身体能力(移動機能)が低下した状態が、ロコモティブシンドロームといいます。
 
ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ) の進行によって、 要支援、要介護になる原因となりますが、転倒、骨折や関節の病気など運動器の故障であることはあまり知られていません。

 

子供の筋力低下

成人のロコモ 有病率は非常に高く、社会的な問題として注目されていますが、若齢期の筋力低下も最近増えています。
 

寺口らは 子供ロコモおよび生活習慣に着目して骨密度低下の要因を検討した大規模コホート研究KID locomo studyを実施しました。
その結果、小児の19.1%で骨密度が低下し、それは、ローレル指数 *の低下、睡眠時間の低下、子供ロコモ、長時間のスマホ使用が考えられると推察しています(第26回日本骨粗鬆症学会)。
*※1 ローレル指数:幼児や児童、生徒の肥満度を評価する指数です。
肥満児
 

子供を対象にした大規模コホート研究

ロコモの原因にもなる骨粗鬆症は高齢になって突如発症するわけではありません。最近の研究では成長期の運動不足、生活習慣、睡眠時間の減少が、骨粗鬆症リスクを高めることが指摘されています。

大規模コホート研究KID locomo studyでは、小児における骨密度低下の要因を明らかにするため、子供ロコモおよび生活習慣との関連を検討しました。
対象を 小学校5校、中学校2校で実施しました(平均年齢10.4±2.6歳、男児52.1%)。その結果、長時間のスマホなどの利用と骨密度の低下に有意な関連がみられたことを報告しています。

 

カラダを動かそう!

社会環境や生活様式の変化に伴い、子供の運動不足が深刻化し、運動機能が低下しています。文部科学省の幼児期運動指針(2012年)では、毎日合計60分以上、体を動かすことを推奨しています。
しかし、1日1時間の運動を習慣化するのはかなり難しいかと思います。
つまり、短い時間でも良いので、とにかく毎日、 体を動かすことが大切です。通学での歩行や家の中であれば、テレビを見ながら体操やストレッチなどを習慣的に行うことが大事です。
 

新しく運動の習慣を作るのは大変ですが、生活の中で行う運動を意識して行えば、生活習慣として根付くと思います。自転車や車での移動は便利ですが、可能な方は片道だけでも歩いてみたらいかがでしょうか?

スポーツキッズ
 

食習慣を見直そう!

成長期はカラダの土台を作る大事なときですので、将来的なロコモ予防の観点からも偏らないしっかりとした食事を摂ることが大切です。
その中でも、筋肉や骨をつくるたんぱく質やカルシウムそしてビタミンDとビタミンKなどの栄養素です。さまざまな食品をバランスよく組み合わせて、日々の食生活の中で摂ることが丈夫なカラダづくりにつながります。
 

また、副菜や汁物に、たんぱく質やカルシウムの合成・吸収を高める野菜や海藻を組み合わせて効率よく栄養を摂ると良いでしょう。
ファーストフードや加工食品に頼りすぎると、カルシウムの吸収が阻害される恐れがありますので摂りすぎに気を付けてください。 
 

さらに、朝食の欠食はエネルギー不足の原因となります。エネルギーが不足すると、せっかく作った筋肉を分解してエネルギーを産生しますので、しっかり摂ることを心掛けて下さい。
たんぱく質の合成を助けるビタミンB6(赤身やバナナに多い)も同時に摂取す ると効果が増します。特に運動後は素早くこれらの栄養素を補給することで 筋肉が強くなります。
一方、骨の材料となるカルシウムを積極的に摂取することが重要です。乳製品以外に、小魚・海藻・大豆・青菜などに多く含まれます。
 

また、ビタミンDはカルシウムの吸収をサポートし、ビタミンKは骨形成や骨量の維持に 重要な栄養素です。ビタミンDは魚やきのこ類に、ビタミンKは納豆や緑黄色野菜に 多く含まれます。
それぞれの栄養素を気にして偏りなく摂取することが子供ロコモを予防する基盤となりますので、親御さんがしっかり食事をサポートしてください。

野菜中心の生活

 

まとめ

成長期の子供達を将来のロコモから予防するためには、生活習慣を見直し、偏らない食事を摂取することが重要です。
栄養過多や偏食によって、本来成長に必要な栄養素バランスを崩してしまいます。また、肥満によって膝や腰に負担がかかり、運動器の障害に繋がります。
 
また、普段からスポーツをしている子供たちは成長期に必要な栄養素以上に運動に使われてしまうので、大人以上の食事内容を考慮する必要があります。その場合、必要に応じて、成長期用のプロテインやサプリメントを使っても良いと思います。
 

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