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投稿日:2025年11月1日/更新日:2025年11月4日


クリルオイルって知っている?魚油と何が違うの?①クリルオイルとは?

はじめに

クリルオイルは、南極オキアミ(Krill)から抽出される油脂で、EPAやDHAといったオメガ3脂肪酸を豊富に含みます。
最大の特徴は、リン脂質(Phospholipid:PL)型のオメガ3が多いことが、吸収効率の良さにつながっているとされています。

 

クリルオイル(Krill Oil)と魚油の化学的構造の違いと生体利用性

魚油のオメガ 3(EPA、DHA)は主にトリグリセリド(TG)またはエチルエステル(EE)として存在しています。一方、クリルオイルは約30–70 %がリン脂質(PL)、特にホスファチジルコリンとして結合されています。
また、リン脂質は親水性と疎水性を併せ持つ両親媒性(アミフィリック)で、ミセル形成を促進することで、消化吸収されやすくなるとされ、生体利用性の向上が期待されます。

 
▲ポイント
•PL型は小腸でのミセル形成がスムーズ
•脂質の消化・吸収に有利
•細胞膜との親和性が高く、利用効率が良いとされる

最新研究でわかった「クリルオイルと魚油の吸収の違い」

過去からのエビデンス

•Schuchardt et alは1,680 mgのEPA+DHAを単回投与したときに、クリルオイルが最も高い血漿リン脂質中への取り込み(AUC)を示し、次いで魚油TG、魚油EE、の順に低かったことを報告しています。
•Köhler et al.はランダム化クロスオーバー試験において、約1,700 mgのEPA+DHAを含むクリルオイル、クリルミール、魚油を比較した結果、72時間のAUC(血漿リン脂質)はクリルオイルが最も高く、クリルミールおよび魚油では有意差がなかったことを報告しています。
ただし「PLだからよい」という単純な構造–効果の結びつきには注意が必要であることも併せてコメントしています。つまり、食物マトリックスの影響なども考慮が必要ということでしょう。

最新のメタ分析

魚油とクリルオイルに関して26本の文献を結合した分析によると以下の内容が分かっています。
o低用量(2,000 mg未満): クリルオイルの方がオメガ 3インデックス(血中指標)の吸収に優れている。
o魚油EE(2,000–2,900 mg): 吸収速度(Tₘₐₓ)が早い可能性がある。
oクリルオイル(PL/FFA 形態): AUCが最も高い。
o魚油の乳化型: Cₘₐₓ(最大血中濃度)は魚油乳化型が高い傾向だった。ただし、研究間の異質性や統計的限界も指摘されています。

最近の臨床試験

•Schoen et al.によると、クリル由来PLと魚油EEの単回投与下で、PL+ EPA/DHAは標準魚油EEに比べ、12時間および72時間までのiAUCで約10.5倍の吸収を示したことを報告しています。
•Liana et al.によるとリン脂質強化魚油(PEFO)と通常のクリルオイルの吸収を比べたところ、24時間でのiAUCは類似(PEFO:319 vs KO:385 nmol/L·h)していたものの、PEFOの方がピーク濃度が高く、Tₘₐₓが早いという吸収プロファイルの差異が見られたことを報告しています。

▲ポイント
 ・クリルオイルは魚油よりもAUC(総吸収量)が高い
・クリルオイルは魚油よりも吸収スピードも速い可能性
・リン脂質強化技術でさらに吸収が10倍以上になる
*10.5倍の吸収量、12時間以内にピーク濃度到達という劇的な改善

 

実用的な視点・注意点は?

Brownはクリルオイルは魚油に比べ3〜4倍高価であるため、コストパフォーマンスの点が課題であると指摘しています。
また、吸収が良いことは事実ですが、血圧や心血管リスクの改善など臨床アウトカムにおいては明確な優位性は示されていません。
安全性と相互作用に関して、血液凝固系に影響する可能性(出血リスク)については、魚油と同様にクリルオイルにもあり、甲殻類アレルギーのある方は注意が必要です。&nbsp
さらに、多くの専門家は、サプリメントに頼るよりも、魚やナッツ、シード類などの食事由来のオメガ 3摂取を重視すべきとしています。どんなに吸収が良くても、それだけで「健康効果が優れている」とは言い切れません。

 

臨床効果(心臓病予防など)はまだ限定的

吸収効率が高いからといって、必ずしも病気予防効果が高いというわけではありません。
現時点までの報告ではクリルオイルが魚油に比べて明確な「臨床的優位性(心血管疾患予防など)」は示されていません。
▼ポイント1
•クリルオイルは一般的に魚油の約3〜4倍の価格
•コストパフォーマンスを重視するなら注意が必要
▼ポイント2
•甲殻類アレルギーの方はNG
•ワルファリンなど抗凝固薬との併用は医師に相談を

 

まとめ

クリルオイルを摂取するには以下のような人におススメでしょう。
吸収効率を重視したい人、少量でしっかり摂りたい人などは魚油よりもクリルオイルが良いでしょう。
ただし、コストが気になる人や薬剤を服用中の人、甲殻類アレルギーがある人は積極的な使用は避けるべきと思います。
また、どんなに高性能なサプリメントでも、まずは食事からオメガ3を摂ることが基本です。青魚(サバ、イワシ、サンマなど)やナッツ、亜麻仁油、チアシードなど、日常の食生活でカバーできるケースも多いのでご自分の生活スタイルで摂取すると良いと思います。

 

参考文献
Ramprasath VR., et al., Lipids in Health and Disease 142 (2015)
Jan Philipp Schuchardt JP., et al., Lipids Health Dis, 22: 10: 145 (2011)
Lipids Health Dis
Köhler et al., Lipids Health Dis, 14: 19 (2015)
Pham TPT., at al., Food Chem, X 24 (2024)
Schoen C., et al., Pharma Nutr. 30 (2024)
Liana L. et al., Nutr 114 (2023)
Brown S. Krill Oil vs. Fish Oil: Which Is the Better Omega-3 Source? (2025)