Column
投稿日:2026年2月17日/更新日:2026年2月12日

目次
成長期の子どもたちを指導する現場では、競技力向上と同時に健全な成長を守る視点が強く求められます。
特に近年は、プロテインや各種サプリメントの情報が氾濫しており、コーチ自身が意図せず「過度な期待」や「誤った理解」を助長してしまうリスクもあります。
本稿では、日本人の食事摂取基準やスポーツ栄養の基本原則を踏まえ、コーチが理解しておくべき共通認識と安全な伝え方・関わり方を短く整理したいと思います。
成長期(概ね小学校高学年〜高校生)は、筋肉だけでなく以下が同時に発達する時期です。骨量の増加、血液量の増加、内臓機能の成熟、神経系・ホルモン系の発達などが挙げられます。
この時期の子供たちの栄養は競技力向上よりも「正常な成長」を優先する必要があります。そのため、「筋肉をつけるために◯◯を摂る」といった単一目的の栄養指導は適切ではありません。
成長期の栄養管理において最も重要なのは、特別な食品や方法ではなく、日常の食事が安定しているかどうかです。
スポーツをしている子どもであっても、まず優先されるのは、毎日の食事によって成長に必要なエネルギーと栄養が確保されているかという点です。特に、コーチとして以下のポイントを意識して確認することが重要です。
•1日3食を基本に、欠食せず食事がとれているか
•主食(ごはん・パン・麺類など)が不足していないか
•肉・魚・卵・大豆製品などの主菜を日常的に摂取しているか
•乳製品や小魚など、カルシウム源の摂取機会があるか
たんぱく質は体づくりに欠かせない栄養素ですが、十分なエネルギー摂取があって初めて体の材料として利用されます。
エネルギーが不足している状態では、たんぱく質は筋肉や組織の形成ではなく、エネルギー源として消費されてしまい、効率的な体づくりにつながりません。
実際の指導現場では、生活リズムや練習環境の影響により、栄養面での課題が生じやすくなります。
•練習前後の食事時間が確保できない
•朝食が軽い、または欠食している
•練習後の疲労により食欲が低下する
•間食が菓子類や清涼飲料中心になる
このような状況が続くと、エネルギーやたんぱく質、ミネラルの不足が慢性化し、成長や回復の遅れ、疲労の蓄積につながる可能性があります。
ここで重要になるのが、日常の食事を補う手段としての補食(間食)の考え方です。
補食は、食事と食事の間をつなぎ、必要な栄養を補うためのものです。おやつ=嗜好品ではなく、食事の一部として考えることがポイントになります。
◎補食の主な目的
•エネルギー不足を防ぐ
•練習の質や集中力を維持する
•次の食事までの栄養的なつなぎ
◎補食として推奨しやすい例
•おにぎり
•パン+牛乳・ヨーグルト
•バナナなどの果物
•小さなおにぎり+ゆで卵
ここで重要なのは、「完璧な補食」を求めることではありません。菓子類だけに偏らないよう、少しでも栄養価のある選択肢(食事に近いもの)を増やす意識を持たせることが大切です。
成長期において、サプリメントやプロテインは必須ではありません。あくまで、食事だけでは不足しやすい場合に活用する補助的な手段として位置づけます。
◎プロテインを検討できる場面
•練習後すぐに食事がとれない場合
•食が細く、たんぱく質摂取量が明らかに少ない場合
•補食の一部として利用する場合
◎注意点
•食事の代替にしない
•摂取量を増やしすぎない
•「飲めば強くなる」と誤解させない
コーチが個別に「これを飲みなさい」と指示することは避け、摂取の判断は保護者に委ねる姿勢が重要です。
鉄・カルシウムなどのミネラル類は、不足が問題になる一方で過剰摂取のリスクもあります。
•自己判断での摂取
•複数製品の併用
は避ける必要があります。体調不良や明確な不足が疑われる場合は、管理栄養士や医療機関への相談が望まれます。
コーチの役割は、何を飲ませるかを決めたり、摂取量を管理したりすることではありません。
重要なのは、スポーツをする子どもたちに対して、食事は競技力だけでなく成長そのものを支えていること、スポーツをしていない子ども以上に、食事量や内容が重要であること、休養もトレーニングの一部であること、成長には時間がかかること、といった長期的な視点を伝え、理解を促すことです。
コーチは、子どもたちの成長を急がせる存在ではなく、その過程を支え、見守る立場であることが求められます。
成長期の体づくりの基本は、特別な食品や方法ではなく、日常の食事を安定してとることにあります。
補食は、食事と食事の間をつなぎ、練習や日常生活に必要なエネルギーと栄養を確保するための手段です。
サプリメントは、食事だけでは補いきれない場合に限り、状況に応じて活用する「補助的な選択肢」として位置づけることが重要です。成長期は個人差が大きいため、栄養に関する判断は指導者だけで完結させず、保護者や専門職と共有しながら進める必要があります。
成長期の食事指導において最も大切なのは、短期的な成果を求めて子どもを急がせることではありません。
体の大きさや成長スピードを他者と比べさせず、無理をさせない環境を整えることで、子ども自身が自分の体と向き合い、長期的に健やかに成長していく土台が築かれます。
指導者は、その過程を支え、見守る立場であることを常に意識することが重要です。
「何を与えるか」ではなく、「どのような考え方を伝えるか」が重要なので、正しい知識と冷静な判断を共有することが、今後の子供たちの健康と競技力の両立につながると思います。
■参考文献・資料
•厚生労働省日本人の食事摂取基準(2020年版/2025年版)
•日本スポーツ協会スポーツ栄養学ガイドブック
•日本栄養・食糧学会栄養学レビュー・総説論文
•文部科学省学校給食実施基準
•日本小児科学会成長期栄養に関する提言