コラム

Column

投稿日:2025年10月1日/更新日:2025年10月1日


カフェインって身体にどうなの?
コーヒー

はじめに

カフェインは、コーヒー豆・茶葉・カカオ・マテなどに含まれる天然の化学物質(アルカロイド)です。
これまで経験的にこれらからカフェインを摂取することで、眠気がおさまったり、集中力が高まったりすることが皆さんはご存知かと思います。
カフェインと健康に関する研究は、国内外で多数行われており、カフェインを習慣的に摂取することでさまざまなメリットやデメリットがあることが報告されるようになっています。デメリットが生じない適度な量とはどのくらいなのでしょうか?

 

カフェインの摂取源と含有量の違い

カフェインは、コーヒーや茶葉、カカオ豆などの植物由来食品ですが、エナジードリンクや総合感冒薬などにも添加されています。
例えば、コーヒー100 mL中に約60 mg、煎茶では20 mg、紅茶では30 mg程度のカフェインが含有されています。
また、エナジードリンクや市販薬では、製品ごとに含有量が異なり、1回量あたり30〜300 mgのカフェインが含有されているようです。
カフェインの苦味を活かしつつ、覚醒作用や疲労回復効果を期待して配合されることが多く、風邪薬や鎮咳去痰薬、頭痛薬などにも用いられている点は、食品と医薬品の両面において重要な機能性成分としての位置づけを示しています。

 

カフェインの体内吸収・代謝・解毒のメカニズム

カフェインは摂取後すみやかに吸収され、血中濃度は個人差があるものの摂取後30〜120分でピークに達することが分かっています。
その際、カフェインは血液脳関門や胎盤関門、乳腺関門を容易に通過し、中枢神経系に作用します。
肝臓において、カフェインはCYP1A2酵素と呼ばれる薬物代謝酵素によって代謝され、通常約4時間(個人差により2〜8時間)で血中濃度が半減します。

 

飲酒とカフェイン摂取の相互作用

CYP1A2はアルコールの分解にも関与しています。
飲酒とカフェイン摂取の同時併用は代謝を競合させるため、代謝速度を遅延させる可能性があります。
したがって、お酒を飲んでコーヒーを飲んだり、は焼酎をコーヒーで割って飲むというのは、解毒能力を著しく損なうリスクがあると考えられます。
さらに、ニコチンはCYP1A2の発現を誘導するので、喫煙者はカフェインの代謝能力が高い傾向にあります。
したがって、おタバコをお吸いになられる方がコーヒーを多量に摂取することが多い背景にはこのような生理的根拠があります。

 

神経系への作用と個人差

カフェインは、アデノシン受容体に対するアンタゴニスト*として作用し、抑制性神経伝達物質アデノシンの働きを阻害することで神経が興奮状態になります。
このメカニズムにより、眠気を覚まし、集中力の向上、記憶力や運動能力の増強効果が得られると考えられています。
*生体内の受容体(レセプター)に結合するものの、それ自体では受容体を活性化させず、アゴニスト(作動薬)や内因性リガンド(生体内で受容体に結合する物質)が受容体に結合するのを妨げ、その作用を阻害または減少させる物質のこと。
ところで、アデノシン受容体にはA1、A2A、A2B、A3の4種類が存在し、大脳基底核などの領域に多く分布しています。さらに、アデノシンA1受容体は腎臓の尿細管にも発現しており、カフェインは利尿作用を誘発することも知られています。
また、アデノシン受容体遺伝子およびCYP1A2遺伝子には一塩基多型(SNP)が存在し、個人のカフェイン感受性や代謝能に大きな影響を及ぼします。このような遺伝的背景の違いにより、同じ量のカフェインを摂取しても人によってその効果や副作用は大きく異なることが明らかとなっています。

 

適正摂取量と健康影響

カフェインは、適量の摂取であれば覚醒や認知機能の向上などの有益な効果が期待される一方、過剰摂取による中枢神経系や循環器系への健康被害のリスクが報告されています。
国内外でエナジードリンクの過剰摂取による死亡例もあり、注意が必要でです。
日本では規制がまだありませんが、カナダ保健省などでは、健康な成人における1日あたりの安全な摂取量の目安を400mg、妊婦・授乳中の女性では300 mgとし、小児では年齢に応じて45〜85mgまでと推奨しています。
さらに、13歳以上では体重1 kgあたり2.5mg未満に抑えることが望ましいとされています。

 

他の海外でのエナジードリンクの規制に関して

世界各国では、子どもや若年者の健康保護や過剰なカフェイン・糖分摂取への対策として、エナジードリンクに対する規制がさまざまな形で導入されています。

1)欧州(EU加盟国など)

欧州連合(EU)では、1リットルあたり150mgを超えるカフェインを含むエナジードリンクに対し、パッケージに明確な表示を義務づけています。具体的には「高カフェイン含有-小児・妊産婦には推奨されない」といった警告文言と、100ml当たりのカフェイン量を記載することが求められています。
また、各国ごとの追加措置も多様です。ポーランドでは学校内や自動販売機での販売も制限され、違反には罰金が科される厳しい法規定が設けられています。
スウェーデンでは15歳未満への販売が禁止されており、一部商品は薬局でしか販売できないなど、さらに厳しい制限が存在します。ドイツでは法的には販売年齢の規制はないものの、消費者保護団体や食品安全機関が「150mg/L以上のエナジードリンクについて未成年者への販売禁止を求めている」との動きが報告されています。
一方、イタリアやフランスでも学校内での消費禁止や強力な警告表示が義務づけられており、イギリスでは150mg/L以上の製品に対して「16歳未満には適さない」とラベルに記載することが業界の自主規制として定着しています。

 

2)中国、インド

中国では、飲料中のカフェインを最大150mg/Lに厳しく上限設定しており、これを超える製品は輸入が阻止されるなど強い規制が敷かれています。
インドでは、食品安全基準機関(FSSAI)がタウリンやD グルクロン酸ラクトン、イノシトール、パントテン酸などの配合上限を明確に定め、製品設計に制限をかけています。

 

3)その他地域(オーストラリア・ニュージーランド・中南米など)

ニュージーランドでは、「Prime Energy」など高カフェイン飲料が法定上限(320mg/L)を超えるとして販売禁止措置がとられ、一部地域では罰金も科されています。
また、オーストラリア南部でも高カフェイン製品150本が法令違反として没収され、罰金対象となった事例があります。

 

まとめ

カフェインは、適切に摂取すれば多くの有益な作用をもたらす一方で、体質や摂取方法、摂取量を誤ると健康被害を引き起こす可能性がある成分です。
特にエナジードリンクのような高濃度・高糖分の商品には注意が必要であり、世界的にも規制が進められている現状を踏まえると、私たち一人ひとりが「どれくらいなら安全なのか」を理解したうえで、節度あるカフェイン摂取を心がけることが重要です。