コラム

Column

投稿日:2025年6月1日/更新日:2025年5月28日


海外でも注目されてきているエクオール
エクオール

■はじめに
エクオールとは、大豆イソフラボンのひとつであるダイゼインが腸内細菌によってつくられる代謝産物です。
これまで、大豆イソフラボンは女性の健康維持・美容維持に効果的な成分と言われていますが、近年の研究で、その効果には個人差があることがわかっています。
大豆イソフラボンを摂取したときに腸内で作られるエクオール産生量の違いが、健康・美容効果にも個人差が現れることが分かってきました。

 

また、ダイゼイン代謝産物のエクオールを含めた大豆イソフラボン類はエストロゲン様骨格をしており、女性ホルモンに似た働きをすることも分かってきています。
現在では更年期症状の改善や骨粗鬆症予防効果、女性のメタボ改善作用などさまざまな報告がされてきています。

 

海外でのエクオールの動向

大豆
日本市場ではよく知られているエクオールですが、これまで海外市場ではあまり目にされてませんでした。
その理由として、大豆イソフラボンの摂取基準が設定されておらず、サプリメントとしてイソフラボンを多く摂取することに相対的な抵抗感が低いことが原因のようです。
一方で、フェムケア需要は注目されている中で、エクオールにも注目があるように思われ、中国産の高純度品が上市されてきています。

 

エクオールの研究

エクオールは、大豆イソフラボンの一種であるダイゼインが腸内細菌によって変換される最終生産物です。
この成分はエストロゲン受容体βに選択的に結合し、ホルモン様作用を発揮することが知られています。

 

特に閉経後女性において、ホットフラッシュや多汗といった更年期症状の軽減にエクオールが寄与するという臨床的報告がされています。
日本人女性を対象とした研究では、S-エクオールの摂取によって更年期スコアが有意に改善されたことが報告されています。
エクオールは骨吸収の指標である尿中NTX濃度を低下させるなど、骨強度維持への効果も示唆されています。

 

さらに、LDLコレステロールの低下や血管の柔軟性向上といった心血管保護作用も複数の研究で報告されています。
美容に関する内容として、エクオールは抗酸化作用や抗炎症作用を持ち、皮膚のハリや弾力性の維持、シワの改善といった美容面での効果も期待されています。

 

海外のエクオール原料と最終製品の検討

ホルモンバランス
中国を拠点とする健康成分を専門とするBonerge Lifescience社は、99%以上の純度を有するエクオール製造に成功し、安定的な供給体制を確立しました。同社はグローバル市場向けに、この高純度エクオールを活用した機能性製品の拡充を進めています。

 

近年、エクオールの摂取が、体内でエクオールをうまく作れない体質の女性に特に効果的であることが分かってきました。
実際、日本人女性のおよそ半数はエクオールを産生できないと言われており、こうした背景から、サプリメントによる補給は有効な手段とされています。

 

エクオール配合のサプリメントは、すでに更年期ケアを目的とした製品として市場にも広く浸透しつつあります。
さらに最近では、エクオール単体ではなく、他の植物由来成分を組み合わせた、より複合的なアプローチを取り入れる製品開発が進んでいます。

 

特に注目されているのが、フィセチン、ウロリチンA、PQQといった成分との相乗効果。
これらは細胞の老化を抑えたり、ミトコンドリアの産生・活性を高めたりする働きがあるとされ、加齢に伴う不調の改善にも期待が集まっています。

 

このように、エクオールとの組み合わせによって、ホルモンバランスを整えながら、老化そのものにもアプローチできる点が注目されています。

 

また、プレバイオティクスと組み合わせることで、腸内環境を整えつつ、体内でのエクオール生成をサポートする設計も取り入れられています。
今後はこうした“腸から始まるエクオール戦略”も、より重要なポイントになってくるかもしれません。

 

まとめ

アンチエイジング
アジア市場のみならず、欧米の閉経期女性を対象とした販路拡大も進められているようです。
消費者の関心は「副作用の少ない自然由来の成分」を期待しており、エクオールはその要件を満たす成分です。

 
今後もさらに、エクオールは、更年期症状の緩和・改善とエイジングケアを目的とした機能性成分として、多くの研究集積によって注目を集めることが予想されます。

 

 
管理栄養士、博士(生物環境調節学) 千葉 大成

■監修

管理栄養士、博士(生物環境調節学)、専門は栄養生理学 千葉 大成

■人々の健康のために

 東京農業大学大学院博士課程修了後、国立健康栄養研究所、大学研究機関で、食と健康に関わる研究活動および教育活動に18年携わってきました。研究活動としては、機能性食品素材に着目した骨粗鬆症予防に関する研究を主に行ってきました。一方で、教育活動の傍ら、地域貢献セミナーや社会人教育にも携わってきました。
 そういった研究・教育活動から疾病をいかに予防するかを考えるようになりました。つまり、薬剤で“病気にフタ”をすることで病気を抑えることよりも生活習慣(食事、運動、サプリメント)で“病因を流す”ことによって疾病を予防していくことを積極的に働きかけていきたいと考えるようになりました。

■略 歴

2000年東京農業大学農学研究科博士後期課程修了後、2018年まで大学教育研究機関で主にフラボノイドによる骨代謝調節に関する研究に従事した。